- 独立行政法人 国際協力機構
独立行政法人国際協力機構(JICA)は、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。その事業内容は時代の流れや各国の情勢に応じて刷新され続けていますが、昨今は先端技術による途上国の課題解決事例も増え始めています。JICAがハブになることによって実現したイノベーティブな事例をもとに、国際協力の現場で期待されるイノベーションの可能性について、JICA企画部イノベーション・SDGs推進室の木村 聖さんにお伺いしました。
発展途上国の開発援助や国際関係などのテーマについて幅広く学んだ後、ゼミでは文化人類学を専攻しました。進路決定のきっかけは、2001年にアメリカで起こった同時多発テロ事件です。事件の原因となった宗教問題や国際関係の実態について学びたいと思い、これらが幅広く学べる国際関係の学問に惹かれました。その後大学院に進学してからは、ケニアをはじめとした発展途上国の農業・農村開発を研究テーマに選びました。
私の出身地である大分県では30年以上前から一村一品運動という地域振興運動があり、その取り組みがJICAが行っている協力の一環としてアフリカ各国に展開されていました。この事実は後に知ったことですが、自分のルーツである大分とアフリカの間に関連性があることも、興味深いと感じたことです。
都市と農村の格差を是正したいという目標が第一にありました。就職活動開始直後は大学院での専攻に直結する仕事に携わることができるシンクタンクや開発コンサルティング企業を志望していましたが、そこに仕事を発注するのは世界銀行やJICAなどの開発援助機関です。案件形成段階から実施まで一貫して携わるためにも、受注側でなく発注側で働く方が魅力的だと考えて、JICAに入構しました。
これまで配属された部署では、主にアフリカ各国の農業・農村開発に関わってきました。他にも、紛争後の国や地域の生計向上支援やインフラ整備、民間企業のCSR活動との連携などに広く携わっています。
JICAでは入構1年目に新入職員全員が開発途上国に3~4カ月赴任する海外OJTを行うのですが、私ははじめにガーナとシエラレオネに行きました。現地で暮らす経験から見える課題は、何よりもの学びになります。協力の対象として見るのではなく、自分がより良く生活するために何をすべきかを当事者として考えますから、より真剣に取り組めますね。
その後ケニアへの長期駐在や北海道(帯広)での市民参加協力事業の担当を経て、2020年6月からは企画部イノベーション・SDGs推進室に所属しています。
2018年から年1度、新規事業の社内コンペを行っています。これまでに130件の応募があり、うち20件が採択されました。一般的な事業は担当部署内での検討・承認を経て事業が進みますが、社内コンペに関しては提案者の現在の所属部署に関係なく、興味・関心のあるテーマを検討できるのが特徴です。過去には所属部署の異なる同期入構の若手職員が集まって提案したアイデアが採択された例もあります。採択後は提案者が中心的役割を担い新規事業の実現に向けて取り組むことになりますが、担当部署からのサポートも得られるよう、機構内でもフレキシブルに対応できる基盤が整っています。
「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」の設立は新規事業のアイデアが具体化した一例です。
アフリカにおけるカカオ生産現場では、児童労働問題が根強く残っています。しかし、この問題にJICAが直接的に単独で取り組むのはこれまで難しい状況でした。そこで日本の大手チョコレートメーカーや識者を巻き込み、日本市民にエシカル消費を促すシステムを作ろうというアイデアが生まれたのです。
アフリカの児童労働を促進しないチョコレート製造と消費を、プラットフォームを介して広めることで、社会的にも経済的にも持続可能なカカオ生産を目指しました。本プロジェクトはガーナの現地調査などを重ね、2020年1月のプラットフォーム設立に至りました。
例えば、農業に課題を抱える国に野菜の栽培技術を伝えただけでは、農村地域の貧困削減には直結しません。そこで農業を営む農家は家計簿をつけているのだろうか、作ったものを高く売る工夫はできているのだろうか。そういった一つひとつの疑問に対策していかなければ、根本的な課題は解決できません。
複合的な課題を解決していくためには、私たちJICAだけでできることは限られています。だからこそ民間企業やさまざまな団体と連携しながらイノベーションを起こす意識が重要です。
そもそもJICAの仕事は途上国が抱えている様々な社会課題を解決することですので、真正面からSDGsの達成に向けて取り組んできました。これまでの活動もSDGsの達成に貢献していましたが、SDGsとの交点を見出すことで、より貢献度や貢献内容がわかりやすくなった形です。
SDGsとは、持続可能な社会を作るために達成すべき17の目標です。2030年が達成年限として設けられていますが、これまでと同じ活動を続けていては、この目標をすべて達成することはできません。SDGsに向き合うためには、新しいアプローチやドラスティックなイノベーションが必要です。
例えば、アフリカのルワンダは道路の整備状況が良くないため、輸血を要する患者さんの救急搬送がままなりません。各クリニックの輸血ストックに限りがあり、搬送途中で亡くなってしまう方もいます。
この課題解決方法として一般的には救急搬送の迅速化につながる道路整備が考えられますが、現地ではドローンで輸血ストックを配送するアイデアが、シリコンバレー発のスタートアップ企業により実用化されました。これまでは解決が難しかった途上国の問題を、先進国の持つテクノロジーやサービスとつなげ、課題解決を目指す動きは世界各地で盛んです。日本企業の持つテクノロジーやサービスを活用した現地での実証実験のサポートなども、JICAが貢献できる領域の一つです。
このほか、母子手帳のクラウド管理や、農業研修に代わって農業システムを理解するためのゲームアプリ開発など、持続可能な社会づくりに向けた先端技術の導入による取り組みは進んでいます。災害大国である日本だからこそ、途上国が次の災害に備えるためのノウハウを提供できるという一例もあります。
持続的な社会を目指す意志から紡ぎだせるアイデアは、各領域に幅広く残されています。
途上国の課題解決への想いを強く抱いて入構する人が多いので、対象の国にとって役立つことであれば、共感を得てチームで挑みやすい環境です。課題解決にはさまざまな手段がありますが、いずれも全否定されることはほとんどありません。
若手の提案に対する柔軟性もあると思います。職場の先輩は国際協力の観点ではベテランですが、ツールの使い方やテクノロジーについては若手のアイデアを積極的に取り入れ、事業に活かしている印象です。
JICAも時代の流れに応じ、できることが増えてきました。途上国に先進技術を届けるサポートについては、特に力を入れていきたいです。皆さんが就職先を選ぶにあたっては、関心のある技術や分野に絞って業界を検討する方法もあると思いますが、JICAは各国が抱える課題をもとにあらゆる技術から解決策を模索しますので、そのプロセスを通じて様々な技術や分野について幅広く学びながら働ける環境だと思います。
あらゆる業界に横断的に関わることのできるJICAでの仕事を、私はこれまで楽しんできました。他の仕事だったら、飽きてしまっていたかもしれませんが、常に新しい課題や解決策のアイデアとの出会いがある環境に、いつもわくわくしています。自分自身の実現したい都市と農村の格差是正に正面から取り組めていることも、満足につながっています。
時代や国の状況によって事業がアップデートされていくことが、JICAで働くだいご味です。様々な国の本質的な課題を捉え、テクノロジーを駆使したり、周囲を巻き込みながら、変化を楽しんで働きたい方にとっては、非常に良い環境だと考えています。
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お客様の大切な資産を守るリスク管理と、運用オペレーションをはじめ日常のあらゆる業務を支えるITプラットフォーム。資産運用ビジネスでは、リスク管理とIT活用は常に一体的な高度化が求められ、両分野のプロフェッショナルが果たすべき役割もますます重要になっています。
【前編】デザインの力を存分に活かせる組織づくりへの挑戦
パナソニックのデザイン、そのルーツは1950年代にまで遡ることをご存知だろうか。創業者 松下幸之助がアメリカでの市場視察でビジネスの決め手がデザインになっている現地を目の当たりにし、「これからはデザインの時代である」と痛感したところからはじまる。そして、1951年に日本で初めての企業内デザイン部門がパナソニックに誕生した。そんなパナソニックがなぜ、このタイミングで改めてデザイン組織強化に力をいれるのか。そして、「デザインの力で世の中をより良くしたい」と想う新たな仲間とどのような未来をつくっていきたいのか。パナソニック株式会社 採用人事 石黒様、太田様、コミュニケーションデザイナー黒田様にお話を伺いました。