デザイン思考カレッジ

海外のデザイン思考の事例と日本企業の動き

2021.11.11 イノベーションジム事務局

最近、「デザイン思考」という言葉を耳にする機会が増えているのではないでしょうか。私自身も就活を通じて社会ではDX人材が求められている、デザイン思考を身につけることが今後活躍するために大切である、などといったことを多く聞きました。このような動きが日本では始まったばかりのようにも思えますが、海外に目を向けてみるると、もっと以前から取り入れられ、応用されています。今回は今後日本の企業がどう変化していくのか考えたいと思います。

イノベーションのためのデザイン思考

デザイン思考は、アメリカのデザインコンサルティングファームIDEO社のコンサルティングノウハウから発展し、P&GやGE、GAFAといった大企業が事業戦略に導入するなど、世界的に注目を集めています。デザイン思考は、コンセプトを生み出し、そのコンセプトをどうやって作るのか、さらには顧客にどのように販売するのかまでを考えるビジネス思考の方法です。

 

観察から洞察を得て、仮説を作り、プロトタイプを作って、検証し、試行錯誤を繰り返し、改善を重ねて製品やサービスを生み出す、創造的なプロセスです。人に注目し、観察を通じて、人々の行動や思考、コンテクストをありのままに理解することからスタートするところが特徴的です。マーケット構造が変化し、ニーズが多様化したため、従来の「仮説検証型」のアプローチが通用しなくなっているデジタル時代には、ユーザー中心主義でイノベーションの創造に強いデザイン思考が必要になっているのです。

 

2014年1月には社内にワーキンググループが立ち上げられ、デザイン思考をファシリテーションできる人材の育成が進められるなど、全社的な取り組みへと発展しました。デザイン思考の導入自体がデザイン思考的に進められており、試行錯誤を繰り返しながら徐々に全社の取り組みへと展開され、組織的にデザイン思考を取り入れる際の1つの道筋といえます。

 

デザイン思考は、実際に多くの企業でクリエイティブな製品開発に生かされているだけでなく、社内の活性化をさせる機能も併せ持っていると言えます。社員同士の意見交換などを大切にするため、このフレームワークの導入によって社内でコミュニケーションが活性化し、企業の方向性が共有されることで、組織体制の強化にもつながっているます。

日本の企業でもDX人材獲得に向けた動きが加速

日本の企業でも上記のようなデザイン思考を身に付けている人材の獲得に向けた動きが広がっています。例えば総合商社では、新卒採用で同一基準の選考を見直し、「一芸」を評価する動きが広がっています。三井物産はデジタル人材の別枠採用を開始し、住友商事は独創性を問う「デザイン選考」を導入し、経営環境が大きく変わる中、新たな課題解決に取り組める人材の確保を目指しています。(※参考記事 日経新聞:商社、新卒「一芸採用」

 

さらに新卒採用での企業のデザイン思考テストの導入が急増しています。企業はデザイン思考テストを選考の過程に導入することで、面接官の目利きだけに頼るのではなく、定量的に出されたスコアを元により客観的に創造力に秀でた学生の評価を行うことができるためです。既に総合商社やコンサル、メーカー等200社以上で採用や人材育成領域を中心にデザイン思考テストが導入され、月間1万人が受検をしています。今後も受検者数、導入企業数は増加していくでしょう。

最後に

世界的ではもちろんのこと、国内の動きからもこれから必要とされる人材は、デザイン思考力の高さだと言えます。そのためには、とにかく実践してみることが何よりの近道です。目の前にある取り組むべき課題もデザイン思考のプロセスで実践してみてはいかがでしょうか。
その際、デザイン思考を実践する上では注意すべき点もあります。社内や業界といった中の常識から身を外すことです。新しいニーズやその解決策は、まだ誰も気付いていないため、その発見を阻害するのは「常識」です。デザイン思考で最も大切なのは観察と共感で、これらのないアイデア創出だけをしてもあまり意味がありません。今後も社会で活躍できる人材になるために、「常識」にとらわれずデザイン思考を身に着けてみてはいかがでしょうか。
実際にデザイン思考テストを受検してみることで経験値を積むこともできると思いますので、ぜひ受検にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

※参考記事:日経新聞 商社、新卒「一芸採用」