デザイン思考カレッジ

一人ひとりのより良い未来へ向けてーSDGsを実現するためのパナソニックのビジョン

2021.10.05 イノベーションジム事務局

世界中でSDGsが経営上の重要なトピックになっている昨今、日本企業におけるSDGsの具体的な取組みについてご存知でしょうか。
イノベーターズクラブの学生が企業のSDGsに関する取組みや事業に関して取材行う連載企画の第一回。今回はパナソニックを一代で築き上げた経営者である松下幸之助が創業した日本を代表する電機メーカー、パナソニック株式会社 ブランド戦略本部 大原様、採用人事 石黒様にお話を伺いました。

まず、お二方のご経歴を教えていただけますでしょうか。

大原:私は平成元年にパナソニック(当時:松下電器産業)に入社しました。同じ会社に30年というのは今の学生の皆さんからすると信じられないかもしれませんね。入社当時は生活研究や商品企画の部署にいまして、リサーチからデジタル領域の仕事を担当してきました。パナソニックがインターネット領域に取組むところから関わり、最近ではブランドコミュニケーションの業務や、特にこの1年はSDGsのコミュニケーションを担当しております。

 

石黒:私は2008年にパナソニック(当時:松下電器産業)入社し、入社以来一貫して人事の仕事をしています。入社する前は、特に家電の会社のイメージが強かったものの実際入社してみると家電以外にも幅広い事業を展開していたのがとても印象的でした。入社後は、オートモーティブ事業部門にて部門本部人事や工場人事などを担当し、現在は全社採用部門にて、新卒採用戦略・戦術企画/スタートアップ協業推進などを担当しています。

 

御社が取組んでいるSDGsの取組みについて教えていただけますか。

大原:パナソニックは創業当時から「産業を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の発展に貢献する」ということを経営理念にしており、「企業は社会の公器」という考え方を大切にしてきました。ですので、SDGsという言葉が出てくる以前、私が入社したころからSDGs的な考え方が根付いていたというのがパナソニックとSDGsに関する私の率直な理解です。しかし、SDGsが世の中にも浸透している中で改めて「SDGs」という文脈でも広く社会の方々とコミュニケーションをとることの必要性を感じるようになりました。その方が、皆さんのような学生さんや色々なステークホルダーの方にパナソニックが目指している世界や実現したいことをより理解していただけているように感じています。
具体的な取組みについては、昨年私たちがパナソニックのSDGsを体系化したものについてお話させて頂きます。
我々は昨年夏にパナソニックのSDGsを次の3軸で体系化しました。

 

1.事業活動による価値提供
2.責任ある事業活動の推進
3.会社と社員による社会貢献

 

先ほど経営理念の文脈でご説明をさせていただいた通り、SDGsは「会社の事業活動そのもので世界・社会に貢献していくこと」であると考えています。ですので、創業初期から変わらず、真ん中の事業活動を主軸にSDGsへの貢献を目指しています。

事業活動を通じてSDGs達成に貢献していくとのことですが、今後注力していく領域はどういった分野になるのでしょうか

石黒:事業については、パナソニックがどんな歴史を歩んで今に至っているのか、という点を交えながらご紹介します。
パナソニックは「電気を身近にしたい」という松下幸之助の想いから1918年に創業しました。これは、SDGsでいう7番目の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の活動とも言えます。次に1950年代の女性の社会進出。スライドの右上の写真はナショナル家庭用洗濯機の広告をみてください。今では信じられないかもしれませんが・・・1950年代、「女性を家事労働から解放する」とは何事だ!そんなことしたら、女性を怠惰にしてしまう!という考えが普通の時代がありました。女性の社会進出を後押しするような商品をつくり、コミュニケーション・広告宣伝の力を使って世の中を変えてきたのが松下幸之助です。これは、SDGsでいう5番「ジェンダー平等を実現しよう」に取組んだとも言えます。3つ目が週休2日制です。今では当たり前ですが、初めて日本企業で取り入れたのがパナソニックです。「一日休養、一日教養」といって1日はしっかり休む、1日はしっかり勉強することの大切さを、その当時アメリカに視察に行った松下幸之助が、「なぜアメリカで出来て、日本で出来ないのか」ということでもっと生産的に働けるシステムを作ろうと取組みました。
これは、SDGsで言う8番「働きがいも、経済成長も」に該当するのではないでしょうか。このように、結果論かもしれませんが、SDGsの考えに基づいた取組みを行ってきたのがパナソニックの歴史です。

そして、パナソニックの“今“について。パナソニックというと家電のイメージを持つ学生さんも多いと思いますが、実際それだけではありません。こちらの売り上げに関する円グラフをご覧ください。円グラフにあるアプライアンス社というのがパナソニックにおける家電事業を担当している部門になります。ここでご覧いただくと分かる通り売上の全体の3分の1が主に家電を扱っていて、それ以外はB2B、住宅、車載、産業デバイスといったように幅広く家電以外の領域でも事業を行っています。

これは、これから先の未来についても同じで、10年後20年後の世の中の当たり前はどのようになっているだろうかと未来思考で事業を考えています。私たちが大事にしているスローガンは “A better life, A better world” というものですが、この ”A” というアルファベットに強い意味を込めていて、決してtheにはしません。これは特定の誰かではなくて、皆さん一人ひとりに向き合うことを大切にしているメッセージです。
創業100周年の時、我々が次の100年どんな事業をしていくかというと「人のくらしをアップデートしていくというのが存在意義だ。モノを売って終わりではなく、常にカスタム・更新をし続けることを前提としてモノ・サービスの開発を通して一人一人の暮らし・社会をよりよくしていきたい」と発信しています。こういったマインドを大事にしている会社ということで、暮らしの領域全体にパナソニックは大きく関わっていて、家も、家が集まった街も、街と街とを繋ぐモビリティもパナソニックの領域だと考えています。

今後SDGsを推進していくにあたり社内でどのような取組みを行っていますか?

大原:SDGsに関して特別な職種を設けているかというと、まだその状況ではありませんが、私はSDGS を推進するプロセスは3つあると思っています。

 

1つ目は、まず専門性が高い一部の人が取組むのではなく、トップ・経営幹部が「自分ごと」としてSDGs に真剣に取組む姿勢を発信するということ。これが絶対に必要だと思っています。ですので、昨年私たちは各事業部門のトップ、職種のトップにSDGsの文脈で1人ずつ思いを語ってもらい、それをHPに掲載することで社内外の方々にみてもらえるようにするところからスタートしました。

 

1つ目がトップの姿勢だとすると2つ目のレイヤーは事業です。私たちはそれぞれ多岐にわたる事業に取組んでいますが、それぞれの事業を担当するカンパニーのメンバーが、その責任範囲の中で自分たちがいちばんSDGsに貢献できるのはどこなのかを特定しながら進めていくことが大事だと思っています。それは17のゴール全部である必要はなく、特に貢献すべき領域を特定し、事業内できちんと共有しながら進めていくことが重要です。

 

最後3つ目のレイヤーはやっぱり社員1人1人のレベルだと思っています。まず社員1人1人がSDGsについて学ばなくていけないと思っています。そういった社員1人1人を啓発する取組みにはかなり力を入れてやっていて、社員だけではなく社外の方に対しても行っています。例えば、中学校などに出張し、色々なレベルで1人1人の「自分ごと」としてのSDGsの理解を深めてもらうような取組みをしいていますが、そういった中で、全体の底上げを図りたいと思っています。知見のある方を専任とすることもひとつかもしれませんが、私たちは、社員全員の意識を上げていこうとしています。また、グローバルに展開している企業だからこそ、中東、ヨーロッパなど各地域の文化や価値観にあわせてコミュニケーションをすることも意識的に行っています。このようなSDGsに向けた多角的な取組みを通じ、より良い未来を作っていきたいと思います。