データサイエンスは社会を効率化し、
未来のビジネスを豊かにする

アクセンチュアでデータサイエンティストとしてのキャリアを歩む羽入奈々さん。彼女が文系学部卒業後データサイエンティストに転向したきっかけや、データサイエンスという仕事の魅力を語ります。

数字が魅せる傾向に惹かれて――文系出身データサイエンティストの歩み


―データサイエンティストに興味を抱いたきっかけを教えてください。

大学時代、商学部のファイナンス専攻で為替の値動きを分析していたんです。研究を重ねるうちに、世の中の動きが数字の傾向として目で見えることを楽しいと感じるようになりました。


―データサイエンティストを目指して就職活動に挑みましたか?

いいえ。2009年当時、データを扱う職種は専門職であり、就職するのは理系大学院卒の人たちが大半でした。私は文系学部卒だったため、キャリアの方向性に悩みました。金融機関、商社、メーカーなど様々な企業にエントリーし、説明会に参加しました。その中で、まずはシステム関連の知識やスキルを身につけようと考え、日系SIerへの入社を決めました。


―その後アクセンチュアへ転職されたのはなぜですか?

「作った分析結果を利用してほしい」と感じたからです。データを集計して可視化する仕事の中で、現場の方に集計結果を見てもらえないという課題に直面しました。現場には、データの見方を知っている専門家がいなかったのです。ただ集計結果を出すだけでは、現場の役に立つことができませんでした。前職での経験を通じ、私は誰もがデータを活用できる“仕組み”を作りたいと考えはじめました。

転職を検討した7年前、データサイエンスを重視する企業は珍しい時代でした。そんななか、アクセンチュアにはアナリティクスを活かす業務や環境があったんです。また、アクセンチュアのチームは、年齢や立場を問わずフラットに議論できます。『Think Straight, Talk Straight(とことん考え抜き、ストレートに伝える)』という言葉通りの風土に惹かれ、転職しました。

データサイエンスの力で解決される課題はさまざま


―現在はどのような仕事をなさっていますか?

一例として、大手保険会社のデジタライゼーションに携わっています。お客様は自社データをどう活用すべきか悩んでいたので、今あるデータからどんな分析が可能か、結果を見せながらお伝えしていきました。
また、データを分析するだけでは、現場を支えるソリューションは生まれません。プロトタイプを現場へ共有し、フィードバックしていただき、分析に改善を重ねました。
この事例では、2年半で60本弱のモデルをリリースしています。もともとデータサイエンスにあまり詳しくなかったお客様にも、データがもたらす力を感じてもらえました。


―データの力でできることを、具体的に知りたいです。

できることのひとつとして、トレンド予測が挙げられます。ファッション企業の過剰在庫問題を解決するために取り組んだSNS投稿の分析プロジェクトは、わかりやすい一例です。
あらゆる著名なSNSで言及されるファッションに関する投稿文をもとに、AIで傾向を把握。その結果をもとに、予測トレンドをレポートするモデルを作りました。このモデルの正当性が高かったことから、インフルエンサーを活用した同社のマーケティングにもデータ分析が活用されました。
データが課題を解決する領域は、企画・開発、製造・流通、営業・マーケティングと多岐にわたります。


―データサイエンティストは女性が少ない印象がありますが、実際はいかがですか?

男性の割合が多い職種ではありますが、女性のデータサイエンティストも活躍しています。アクセンチュアのデータサイエンスチームはメンバーの多様性を重視しています。
ファッションやコスメなどの領域は、やはり女性でなければ気付けない点がたくさんあります。たとえば、化粧品のデータ分析に必要なカテゴライズで、『プチプラ』や『デパコス』など男性のデータサイエンティストが分類に悩むところを、女性が一瞬で解決してしまったことも……。
女性が使う商品でなくても、お母さまが契約を決める場合の多い保険サービスなども、やはり女性の視点から見たデータ分析が役立ちます。もちろん、その逆で男性にしか理解できない視点もあり、データサイエンスの領域は多様性が生かされる環境だと思います。

データサイエンスで未来を想像し、創造する喜びを


―これからのデータサイエンティストに必要なスキルは何でしょうか?

ビジネスモデルや消費行動をデータから想像する力です。ビジネスの背景を紐解きながら、どこにどのようなAIを活用させるかを考える力が、データサイエンスをより役立つ領域へと成長させていくと思います。


―データサイエンスの魅力とは?

新たな人やモノの流通により、過去データで導いたモデルを変化させる必要があります。その変化に対応していくことが、データサイエンスの最大のおもしろさですね。いつも新たな発見があります。
データサイエンスを活かすことで、社会の既存の仕組みをより効率化させることができます。結果、余剰となった資金を投資に回したり、リソースを新たな試みに割いたりすることで、一層社会が発展していく。その変化を間近で感じられるのは、データサイエンティストの特権かもしれません。


―これからデータサイエンティストを目指す学生にメッセージをお願いします。

学生時代からSQL、Pythonなどの統計ソフトに触れ、スキルをつけていきましょう。私の場合は、R(アール)というソフトで大学生協から購買データをもらって分析していました。身近なデータを分析することは、生きた学びになります。
そのほかにも日常生活のなかで、私たちはデジタルサービスを利用する際にたくさんの情報を入力しています。その情報がサービスの中でどのように活用されるのか、そしてその裏にあるアルゴリズムを想像してみると良いかもしれません。
どんなときでも自分がすべきことを考え、あきらめずに進んでいきましょう。簡単に手が届くものではなく、将来の自分に必要だと思うことに、時間や力を費やしてください。就職活動のなかで、精神的に辛いなと感じたときは、仲間とのコミュニケーションを忘れずに。

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